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2026.03.09

NAD⁺サプリメントの注意点|代謝産物NAMとメチル基の関係を解説

バイオハッキングコラム

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前回は、どんなに良い成分を「届ける(Delivery)」ことができても、細胞がそれを「使える(Utilization)」状態になければ意味がない、というお話をしました。

今回は、その細胞内での利用プロセスにおいて、最も見落とされがちな「バランス」の話をします。

皆様は、高性能なスポーツカーのエンジンを想像したことがありますでしょうか。

エンジンの回転数を上げ(活性化し)、爆発的なパワーを生み出すためには、同時に優れた「冷却システム」と「排気システム」が必要です。

もし、排気管が詰まった状態でアクセルを全開に踏み続けたら、エンジンはどうなるでしょうか? オーバーヒートを起こしてしまいます。

実は、私たちの身体で起きているバイオハッキングも、これと全く同じ原理なのです。

エネルギー産生の裏で起きていること

NMNなどの成分は、細胞内のエネルギー通貨である「NAD⁺(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)」の前駆体として研究されています。NAD⁺は、サーチュインと呼ばれる酵素群の補因子として機能し、ミトコンドリアのエネルギー産生に関与することが、基礎研究で知られています。

※ただし、NMNサプリメントの摂取が人体においてどの程度NAD⁺レベルに影響するかは、現在も研究が進められている段階です。

しかし、エンジンが回った後、使われたNAD⁺はどうなるのでしょうか?

実は、NAD⁺は役目を終えると「NAM(ニコチンアミド)」という物質に分解されます。

このNAMは、再びNAD⁺にリサイクルされる経路もありますが、過剰に蓄積すると、サーチュインの働きを阻害する可能性があることが、研究で報告されています。

つまり、「アクセル(NAD⁺)」を踏みすぎると、自動的に「ブレーキ(NAM)」がかかってしまうというパラドックスが、私たちの細胞内には組み込まれているのです。

鍵を握る「メチル化(Methylation)」

そこで重要になるのが、このブレーキ役であるNAMを速やかに処理し、体外へ排出するシステムです。

この処理工程を、化学用語で「メチル化(Methylation)」と呼びます。

身体は「メチル基」という小さなタグをNAMに貼り付けることで、「これはゴミだから捨ててよし!」という目印をつけます(これをMeNAMと言います)。これによって、私たちは不要なNAMを尿として排出し、細胞内をクリーンに保つことができます。

しかし、ここで一つ問題が起きます。

NMNなどを大量に摂取してエンジンを全開に回し続けると、その排気処理のために、体内の「メチル基」が大量に消費されてしまうのです。

「在庫切れ」を起こさないために

メチル基は、NAMの処理以外にも、DNAの修復や、メンタルを安定させる神経伝達物質の合成など、生命維持に欠かせない多くの仕事に使われています。

もし、NMNの代謝だけにメチル基を使いすぎてしまい、在庫切れ(枯渇)を起こすとどうなるでしょうか?

メチル基が不足すると、DNAの修復や神経伝達物質の合成など、様々な生体機能に影響が出る可能性が理論的に考えられます。

バイオハッキングにおいて重要なのは、ただエンジンの回転数を上げることだけではありません。

「アクセル(NMN)」を踏むなら、同時に「排気システム(メチル基の在庫)」もケアしてあげること。

この「調和(Balance)」を意識することが、バランスの取れた健康管理において重要と考えられています。


この記事で整理できたこと

おさらい

今回は、エネルギー産生の裏側にある「代謝のバランス(メチル化)」について解説しました。

「何かを足す(Supplement)」ときは、それによって消費されるシステム全体を俯瞰して見る必要があります。

ここまで、個体差、DDS、そして代謝バランスについてお話ししてきました。

では、実際にあなたの身体の中で、この「バランス」は保たれているのでしょうか?

NAMは溜まっていないでしょうか? メチル基は足りているでしょうか?

これまでは、それを知る術はありませんでした。しかし、科学は進歩しています。

次回は、これらの目に見えない代謝の流れをすべて可視化する最新技術、『メタボロミクス(代謝物解析)』について解説します。

この記事の監修者 / Supervisor
檜山 和寛
東京銀座ウェルネス&エイジングクリニック 院長

檜山 和寛 Kazuhiro Hiyama

医師・薬剤師のダブルライセンスを保有。日米の医療現場で研鑽を積み、消化器外科部長などを歴任。現在は医学と薬学の深い知見に基づき、細胞レベルでのエイジングケアや予防医療を提供しています。

略歴・資格の詳細を開く

略歴

  • 2008年:東京大学薬学部 薬学科 卒業
  • 2013年:筑波大学医学群 医学類 卒業
  • 2015年:米国にて診療(ECFMG certification取得)
  • 2019年:新松田会愛宕病院 消化器外科部長(がん外来および外科診療立ち上げ)
  • 2019年:カンボジア王国 International University, Department of Surgery

主な保有資格・認定

  • 日本国医師免許・日本国薬剤師免許
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
  • 米国医師臨床資格(ECFMG certification)、USMLE Step 3
  • カンボジア王国医師免許
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本記事は研究背景や考え方を紹介するものであり、特定の効果・効能を示すものではありません。
治療や使用については、必ず医師にご相談ください。

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