幹細胞治療は再生医療の一分野として広く認知されつつある一方で、その治療品質をどのように見極めるべきかについては、十分に共有されているとは言えません。 「幹細胞治療 効果」「幹細胞治療 安全性」「幹細胞治療 どこで受けるべきか」と検索しても、多くの情報は抽象的であり、治療の中身に踏み込んだ判断材料は限られているのが現状です。

しかし幹細胞治療には、治療結果に直接的な影響を与えうる重要な工程があります。 それが「保存管理」です。

本コラムでは、幹細胞治療の工程全体を踏まえたうえで、とくに「保存管理」と「生存率」に焦点を当て、治療品質を合理的に判断するための視点を整理します。保存は唯一の決定要因ではありませんが、無視できない重要なチェックポイントであり、治療のポテンシャルに大きく関与します。

幹細胞治療は「培養後」の工程で差が生じる

自己脂肪組織由来幹細胞治療は、以下の工程を経て実施されます。

• 脂肪組織の採取
• 幹細胞の分離
• 培養による細胞増殖
• 投与可能な状態への到達
• 投与までの保存管理

このうち、5番目の「保存管理」は患者側から見えにくく、説明が省略されることも少なくありません。 しかし実際には、培養完了後すぐに投与が行われるとは限らず、患者の体調、スケジュール調整、治療計画の都合などにより待機時間が発生します。

この待機期間中、幹細胞は一定の保存環境に置かれ、その環境の違いが細胞の状態に影響を及ぼします。 つまり幹細胞治療において保存は例外ではなく、構造的に組み込まれた工程です。

幹細胞治療の品質は工程全体で形成される

幹細胞治療の品質は、採取・分離・培養・保存・投与という一連の工程によって形成されます。このうち保存工程は、すでに形成された細胞品質を維持できるかどうかを左右する段階にあたります。つまり保存は「すべてを決める工程」ではなく、「品質を崩さずに届けられるか」を左右する極めて重要な工程です。

そのため、保存条件と生存率は治療品質を評価するうえで無視できない指標となります。

保存方法の違いが生存率の安定性に影響する

幹細胞の保存方法には主に「冷蔵保存」と「冷凍保存」があります。

• 冷蔵保存

  冷蔵保存は比較的導入しやすい方法ですが、細胞活動が完全に停止するわけではなく、時間の経過とともに細胞ストレスや劣化が蓄積しやすくなります。そのため、生存率にばらつきが生じる可能性があります。

• 冷凍保存

  冷凍保存では細胞の活動を一時的に停止させ、安定した状態を保つことが可能になります。ただし、凍結および解凍プロセスが適切でなければ、逆に細胞損傷のリスクが高まる場合もあります。

重要なのは保存方法そのものではなく、保存工程全体をどのレベルで制御し、管理しているかです。

当クリニックにおける幹細胞生存率比較試験

東京銀座ウェルネス＆エイジングクリニックでは、自院の培養施設において、冷蔵保存および冷凍保存による生存率比較試験を実施しています。

保存開始から0時間、6時間、24時間、48時間の各時点で生存率を測定した結果は以下の通りです。

冷蔵保存群は時間経過に伴い生存率は大きく変動し、安定性にばらつきが見られたのに対し、冷凍保存群は48時間経過後も生存率はほぼ一定を保ち、高い安定性が維持されていました。

この結果は、保存条件によって投与時に機能可能な細胞の割合に差が生じうることを示しています。

生存率は治療品質の「間接指標」です

生存率が高いことは、治療効果を保証するものではありません。 幹細胞治療の結果は、患者の状態や治療部位、目的など複数の要因に左右されます。

しかし、生存率は治療の質を評価するうえで重要な間接指標となります。

• 生存率が高い＝機能可能な細胞が多い
• 機能可能な細胞が多い＝再生医療としてのポテンシャルが高い

この構造は医学的観点からも合理的と考えられます。

当クリニックの特長は「高品質な幹細胞を安定して届ける工程設計」にあります

東京銀座ウェルネス＆エイジングクリニックの特長は、単に冷凍保存を行っている点ではなく、高品質な幹細胞を培養し、その状態を安定して投与まで維持できる工程全体を設計している点にあります。

• 培養環境の精密管理
• 凍結前処理の最適化
• 温度勾配を制御した凍結工程
• 解凍速度および取り扱い手順の標準化

これらの工程を一貫して管理することで、培養段階で確保された幹細胞の質を損なうことなく、投与まで安定して届けられる体制を構築しています。

この保存工程を含む全体設計こそが、生存率の安定性を支える要因です。

幹細胞治療の判断において確認すべき視点

幹細胞治療を検討する際は、次の点を確認することが重要です。

• 保存方法および生存率のデータが開示されているか
• 保存プロセスが具体的に説明されているか
• 品質管理体制が工程レベルで整備されているか

これらの情報が提示されていない場合、治療の中身を十分に理解しないまま判断することになります。

幹細胞治療の本質は「どの状態で投与されるか」です

幹細胞治療の価値は、投与時の細胞状態によって左右されます。 「量」ではなく「状態」が質を規定します。

保存管理という見えない工程を可視化し、客観的データとして提示しているかどうかは、医療機関の姿勢そのものを示す要素となります。

東京銀座ウェルネス＆エイジングクリニックでは、この保存工程を治療品質の中核と位置づけ、再生医療の信頼性向上に取り組んでいます。

結論

幹細胞治療の品質は単一の要素で決まるものではありません。採取から投与までの工程全体が適切に管理されているかが重要です。そのうえで、保存管理と生存率は、治療のポテンシャルを見極めるための実用的な評価指標となります。

幹細胞治療は感覚的に選択すべき医療ではありません。 保存管理という工程をどのように設計し、制御しているかが治療品質に大きく関わります。

治療を検討する際は、表面的な情報ではなく、保存工程という「見えない部分」に注目する視点が求められます。 それが再生医療を適切に理解し、納得のいく選択につながります。