アプローチしづらい腹膜播種にも対応
抗癌剤を腹腔の中に直接注入する治療法を腹腔内化学療法といいます。腹腔内化学療法は、腹膜播種に対して非常に有効な治療方法です。
腹膜播種とは?
■がんが腹部の臓器に散らばって転移
がんが腹腔内に散らばった形で転移を形成する腹膜播種は、胃癌、膵臓癌、大腸癌などの消化器癌や卵巣癌、尿管癌などの癌腫において頻繁にみられる難治性の病態です。
近年の抗癌剤の進歩により切除不能進行がん患者さんの予後は著しく向上しましたが、通常の全身化学療法だけでは腹膜播種に対する効果は乏しく、その予後は極めて不良です。
そこで、腹部にポートを繋いで、直接抗がん剤を投与するのが「腹腔内化学療法」です。
腹腔内化学療法
腹膜播種を伴う進行がん患者に対し、腹腔内に直接抗がん剤を投与する治療法です。
患者の腹部に、抗がん剤の通り道となる管(=ポート)を取り付け、そこから抗がん剤を腹部に直接流し込みます。
東京大学医学部附属病院 外来化学療法部サイトより
腹腔内化学療法のメリット
高い濃度を維持してがんを攻撃
腹腔内化学療法では、投与された抗癌剤が腹腔内全体に広がり、高い濃度のまま腹膜播種と直に接します。一般に抗癌剤は、多くの量・高い濃度の薬が癌に届き、その状態が長く続くほど、効果が高くなります。
(一方で、全身化学療法では、投与された抗癌剤のごく一部しか腹膜播種に到達しません。腹膜の血管は非常に細く、腹膜を流れる血液は約2m2 の広さの腹膜全体で全身を循環する血液の1~2%に過ぎません。)
抗がん剤が長時間留まる
腹腔内化学療法に用いられる抗がん剤であるパクリタキセルは、シスプラチンやマイトマイシンなどの薬剤と比較して、腹腔内投与後に非常に長い間腹腔内にとどまります。腹腔内に投与されたパクリタキセルは少しずつゆっくり吸収されますので、吐き気、食欲不振などの全身的な副作用が起こりにくいのも特徴です。